大阪地方裁判所 昭和35年(保モ)4438号 決定
決定
大阪府河内市大字吉田九五三番地
申立人
ミツワ精機株式会社
右代表者代表取締役
竹 島 一 天
右申立代理人弁護士
中 村 健太郎
大阪市南区塩町通二丁目一番地
被申立人
三注鋼業株式会社
右代表者代表取締役
中矢代 逸 郎
右当事者間の昭和三五年(保モ)第四四三八号執行方法に関する異議申立事件について当裁判所は次のとおり決定する。
主文
被申立人が大阪地方裁判所昭和三五年(ヨ)第六〇一号仮処分決定に基き、昭和三十五年三月十五日大阪地方裁判所執行吏吉本忠男に委任して、別紙目録記載の動産に対してなした仮処分執行はこれを取消する。
申立費用は被申立人の負担とする
理由
申立人の本件申立の要旨は
「被申立人は、大阪地方裁判所昭和三五年(ヨ)第六〇一号仮処分決定正本に基ずいて、昭和三十五年三月十五日大阪地方裁判所執行吏吉本忠男に委任して申立人所有にかかる別紙目録記載の動産に対して仮処分の執行をなした。そこで申立人は右仮処分決定に対し異議の申立をなし、各異議事件は大阪地方裁判所昭和三五年保(モ)第一一九〇号事件として審理せられ、同年七月十九日午前十時の口頭弁論期日に当事者双方が出頭しないので休止となり、其の後三ヶ月以内に当事者双方から口頭弁論期日の指定の申立がなかつたので、昭和三五年十月十九日の経過と共に右仮処分決定の申請は擬制取下となつたものである。申立人は右擬制取下により右仮処分決定は効力を失つたものとして、右執行吏吉本忠男に対し右仮処分執行の取消を申請したところ、右執行吏はこれに応じないので仮処分執行の取消を求めるため本申立に及んだ。」というにある。
よつて申立人の主張につき判断するに、申立人提出にかゝる仮処分決定書正本、動産仮処分調書謄本、証明願書によると、被申立人は昭和三十五年三月十二日大阪地方裁判所において申立人を相手方として「別紙目録記載物件について、被申請人(本件申立人以下同じ)の占有を解いて、これを申請人(本件被申立人)が委任する執行吏に保管させる。執行吏は、被申請人の申出があつた場合には被申請人が右物件の現状を変更しないことを条件として被申請人が使用しているままで保管することが出来る。右の各場合に、執行吏はその保管していることを公示するために、適当な方法をとらねばならぬ。被申請人は、右物件の譲渡、占有の移転、その他一切の処分をしてはならぬ。」旨の仮処分決定を受け、同年三月十五日右決定正本に基ずき大阪地方裁判所執行吏吉本忠男に委任して別紙目録記載物件に対し、右決定の内容にそう仮処分を執行したこと、並びに右仮処分決定に対する仮処分異議事件(昭和三五年保(モ)第一一九〇号)は昭和三十五年十月十九日休止満了になつたことが認められる。ところで仮処分決定に対する異議申立事件において、当事者双方が不出頭のため擬制取下即ち所謂休止満了となつた場合には、仮処分申請そのもが擬制取下となるものと解するを相当とするから、被申請人の仮処分申請は前示認定の昭和三十五年十月十九日をもつて取下したものと看做され、従つて既に発せられた前記仮処分決定は失効したものである。するとそれにも拘らずなされている仮処分の執行は違法なものと云うべく、よつて本件申立を認容することとし、申立費用の負担について民事訴訟法第八十九条を適用し主文のとおり決定する。
昭和三十六年二月二日
大阪地方裁判所第十四民事部
裁判官 宮 地 英 雄